経営理念と経営ビジョン
経営理念と経営ビジョンの違いを明確に答えることが出来ますか?
「得るより与えよ」
これは、どこの企業の経営理念なのかお分かりになりますか?
とても有名な企業です。
フーズ・フォーラス
と言ってもお分かりにならないと思いますが「焼肉酒家えびす」といえば、大抵の方がお分かりになるのではないでしょうか?
2011年に、日本から「レバ刺し」「ユッケ」の食文化を奪った企業です。
そこの経営理念が「得るより与えよ」
実際には、「得ることしか考えず、結果として(食文化を)一方的に奪った」企業ですね。
起業を決意してから、職種を考えることはよくあることですし、それを否定する気はありません。
①「この仕事を自分で経営したい!独立したい!」と考える人と
②「とにかく独立したい!それには、どの職種が良いかな?」
どちらでも悪くはないと思っています。
ただ、①の場合は、すでにその職種に対する、情熱、愛着、誇りが既に存在している場合が多いでしょう。
②の場合は、悪く言うと、打算、よく言うと、綿密なマーケティングに裏付けされた選択です。
当初は、愛着、誇り、自負なんてないかもしれません。
例えば、
楽天の三木谷さんは、ショップサイトをやることが昔からの夢だったわけではないと思います。
でも、今では、ショップサイトの中で、非常に評判が良いです。
手を抜かずに、顧客の満足、あるいは、顧客の要求の上をいくサービスを展開し、他の事業も行っています。
ですから、当初の拘りや誇りは無くても良いのですが、「一生掛ける価値のある仕事」「プライド」そういったものは、必要不可欠なのです。
前沢社長は、アパレルに情熱を注いでいるのでしょうか?
そうです、その職業に情熱を注ぐ必要は不可欠なんです。
企業を運営することへの情熱ではなく、その仕事に対する情熱。
えびすやの場合も全くそうであり、飲食業に対する情熱があったのかどうか?
「得るより与えよ」
キリスト教からきているであろう、この滅私奉公的な言葉は、聞こえは良いですが、実態はどうであったのか?
私が経営していた会社の経営計画書には、もちろん、経営理念と経営ビジョンを冒頭に記載していました。
ですが、それよりも手前に記載していた文章があります。
それは、「経営理念」「経営ビジョン」の定義です。
それが分かっていないと、社員に伝わりません。
経営理念って何?
経営ビジョンって何?
私はこう記載していました。
経営理念とは、
企業の経営全体を包括する考え方である。つまり、社員と諸活動全体の精神的な支柱となるべきもので、それにより、後に続く経営方針・ビジョンや経営計画、従業員の行動指針や行動基準の方向付けがなされる。
「経営者が会社をどう育てようとしているか。
経営者自身を含めて全従業員がどのような心構えで仕事に従事するのか。」である経営ビジョンとは、
『長期的時間軸を持って、企業の目的や使命、実現・提供すべき企業価値などの「将来あるべき姿」を明らかにしたものであり、
そこに至るための企業独自の中核能力(コアコンピタンス)や経営資源の展開方向(方針・戦略)、および企業内で共有されるべき思考・行動様式や行動規範を集大成したもの』である。
簡易に述べるならば、企業経営全般にわたる『革新活動の基本設計図』であるとも言える。
えびすやでは、経営理念は絵に描いた餅であり、経営者自らも基本の心構えにはしておらず、社員にも周知徹底はされていなかったと思います。
徹底されていれば、あのような「与えるのは適当で良いから、得るものは効率よく最大にね」という状況にはならなかったはずである。
誰かが、「経営理念に反する!これはまずいよ」と気が付くはずなのである。
そう、経営理念は、行動の基礎、根幹である。
ですから、良い経営理念を作って、壁に掲げているだけではいけないのである。
私が取っていた方法をお伝えします。
年に1度、主任クラス以上で合宿を行いました。
まず行うことが、
①経営理念 は、これで良いのか?
ということを確認するのです。
話し合いによって、経営理念がマイナーチェンジする場合もあるでしょう。
まずは、経営理念が、社員の腑に落ちなければいけません。
承認された経営理念は、すべての活動における基礎指針となります。
「得るより与えよ」で考えれば、まず第一にお客様のメリットを実行するのが会社の務めとなります。
加工用の肉を生食用として差し出すことは、この基本理念に反します。
ですから、良い経営理念を作るだけでは終わらないのです。
社員と経営者が腑に落ちて、企業の行動指針の基盤になるまで、社内での周知が必要なのです。
因みに、えびすやの経営ビジョンは 『日本一の伝説となるレストランチェーンの実現』だそうです。
ある意味、これは達成しましたね。(皮肉)
経営理念が準拠されていないのですから、経営ビジョンなんて何の意味も持ちません。
経営理念あっての経営ビジョンですから。
ビジョンが明確でも、行動の根幹たる指針が無ければ企業は動きません。